AGA治療における初期脱毛は、多くの患者が経験する現象ですが、その程度には個人差があります。本稿では、特に「ひどい」と感じるほどの初期脱毛を経験したAさん(38歳男性)の事例を通じて、その背景と経過、そして心理的な影響について考察します。Aさんは、20代後半から生え際の後退と頭頂部の薄毛を自覚し、35歳でAGA専門クリニックを受診。フィナステリド内服とミノキシジル外用薬による治療を開始しました。治療開始後約2週間で、Aさんは顕著な抜け毛の増加を経験しました。シャンプー時の抜け毛は以前の倍以上に感じられ、枕や衣類にも多くの毛が付着するようになりました。特に、もともと薄毛が気になっていた前頭部と頭頂部からの脱毛が目立ち、治療前よりも明らかに薄くなったと感じたそうです。Aさんは事前に医師から初期脱毛の説明を受けていましたが、予想以上の抜け毛の量に強い不安と焦りを覚え、治療を中断することも考えたと語っています。クリニックへの相談の結果、医師からは「典型的な初期脱毛であり、薬剤が効果を発揮している証拠。ヘアサイクルがリセットされ、弱い毛が抜け落ち、これから強い毛が生えてくる準備段階」との説明を受けました。また、過去の同様の症例写真なども見せてもらい、一時的な現象であることを再確認しました。心理的なサポートとして、カウンセラーとの面談も行われました。Aさんの初期脱毛は、治療開始後約2ヶ月半続きましたが、その後徐々に抜け毛は減少し、4ヶ月目頃からは産毛の発生が確認され始めました。6ヶ月後には、以前よりも髪にハリとコシが出て、明らかに毛量が増加したことを実感できたとのことです。Aさんの事例は、初期脱毛が非常に強く現れたケースですが、医師との密な連携と正しい理解、そして精神的なサポートによって、困難な時期を乗り越え、治療効果を得られた好例と言えるでしょう。初期脱毛の程度がひどい場合でも、自己判断せずに専門医に相談し、治療を継続することの重要性を示唆しています。