艶やかで健康な髪の毛を育むためには、様々な栄養素が必要ですが、その中でも特に重要な役割を担っているのがミネラルの一種である「亜鉛」です。タンパク質やビタミンといった栄養素が髪の材料やサポート役だとすれば、亜鉛は、それらの材料を組み立てて髪の毛という製品を完成させる、いわば「工場の現場監督」のような存在です。この司令塔がいなければ、髪の毛は作られない。亜鉛が育毛に不可欠と言われる、その最も重要な理由がここにあります。私たちの髪の毛の90%以上は、「ケラチン」という18種類のアミノ酸が結合してできたタンパク質で構成されています。私たちは、肉や魚、大豆製品などを食べることで、体内にタンパク質を取り込みますが、摂取したタンパク質がそのまま髪の毛になるわけではありません。一度体内でアミノ酸に分解され、その後、毛根にある毛母細胞で、再びケラチンというタンパク質に「再合成」される必要があります。そして、このアミノ酸をケラチンへと作り変える、極めて重要なプロセスにおいて、触媒として働くのが「亜鉛」なのです。つまり、どれだけ良質なタンパク質を食事から摂取していても、体内の亜鉛が不足していては、アミノ酸を髪の毛の材料であるケラチンに効率よく変換することができません。材料はたくさんあるのに、現場監督が不在のために工場がストップしてしまっているようなものです。その結果、新しく生えてくる髪が細くなったり、十分に成長できなくなったり、髪の生成そのものが滞ってしまいます。さらに、亜鉛は髪の毛を作る工場である「毛母細胞」の分裂を促進する働きも持っています。毛母細胞が活発に分裂を繰り返すことで、髪の毛は伸びていきます。亜鉛が不足すると、この細胞分裂がスムーズに行われなくなり、ヘアサイクルが乱れ、抜け毛の増加や薄毛の原因となるのです。タンパク質を髪に変える司令塔、そして毛母細胞の活動を促すエンジン。この二つの重要な役割を担う亜鉛は、まさに美しく力強い髪を育むための、縁の下の力持ちと言えるでしょう。
髪の毛の主成分を作る司令塔!亜鉛が育毛に不可欠な理由