ストレスはAGA(男性型脱毛症)の直接的な原因ではない。これは、薄毛治療における基本的な知識です。AGAの根本原因は、あくまで遺伝的素因と男性ホルモン「DHT」の作用にあります。しかし、だからといって「ストレスはAGAと無関係」と考えるのは、大きな間違いです。実際には、ストレスはAGAの進行を著しく加速させる、非常に強力な「悪化因子」であり、両者は極めて悪しき関係にあるのです。この関係性を理解することは、効果的なAGA対策を行う上で欠かせません。ストレスがAGAを悪化させる最大のメカニズムは、「血行不良」です。AGAの素因を持つ人の毛根は、もともとDHTの影響で弱っており、栄養を十分に受け取れない状態にあります。そこに、ストレスによる血管収縮が加わると、頭皮への血流はさらに悪化します。これは、弱っている兵士から、けなげな補給路まで断ってしまうようなものです。栄養不足は深刻化し、髪の軟毛化や抜け毛は、本来のペースをはるかに超えて加速してしまいます。また、ストレスは「ホルモンバランス」を乱します。ストレスに対抗するために分泌されるホルモン「コルチゾール」は、過剰になると男性ホルモンの分泌を促し、結果的にDHTの生成量を増やしてしまう可能性があります。つまり、ストレスは、AGAのエンジンであるDHTの燃料を、さらに注ぎ込むような働きをしてしまうのです。さらに、「睡眠の質の低下」も深刻な問題です。ストレスで眠りが浅くなると、髪の成長に不可欠な「成長ホルモン」の分泌が著しく減少します。成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を促し、傷ついた細胞を修復する働きがあるため、これが不足すると、髪は十分に成長できず、細く弱々しくなってしまいます。そして、この薄毛の進行自体が、さらなる「ストレス」を生むという、最悪の負のスパイラルが始まります。鏡を見るたびに薄毛が進行しているのを確認し、落ち込み、ストレスを感じる。そのストレスが、さらにAGAを悪化させる。この悪循環を断ち切るためには、フィナステリドやミノキシジルといったAGAの根本にアプローチする医薬品による治療と、ストレスを管理し、生活習慣を整えるという両面からのアプローチが不可欠です。AGAの素因という「種」に、ストレスという「水」を与え続けないこと。それが、賢明なAGA対策の要諦です。
知っておきたいストレスとAGA(男性型脱毛症)の悪しき関係